第2章 全国キャラバンの意義
第1節 全国キャラバンという手段
最初に、Joy Projectの基本的な活動基準として従来の障害者の団体を始め福祉関係の団体にありがちな「待ち」の姿勢を中心にしたじっくりと活動をしていくという考え方は捨てて欲しいと代表の渡邊から説明を受けた。
当事、私はセールスプロモーションを得意とする広告代理店数社と専属契約を結び、フリーランスのプロデューサーとして働いていた。広告の世界ではまずクリアラントから与えられた課題に関して徹底的に市場を分析し一番効果の高い手法でプロモーションを組み立て仕事のスタートラインにつく。
事前に各方面からジョイスティックコントロールカーのような障害者専用の車に関して健常者から聞き取り調査をしたところ、実に曖昧な返事しか集まってこなかった。
障害者が運転席に座り自ら運転している事実さえ知っている人が圧倒的に少なく、介助専用のリフト付き車両があることすら、私を含めて周囲の健常者には十分に認識されておらず、質問を重ねる私に「福祉は儲からないよ」とささやかれる始末であった。
こんな逆風の中で一般の健常者が「知っても仕方のない」「興味がない」この車、ジョイスティックコントロールカーの周知活動をすることにとまどいを覚えたのは事実です。しかし、渡邊を取り巻く障害者にインタビューを続けていくといささか事情の違うことがわかってきた。
一般的な健常者が理解している福祉車両は、障害者を「お客」として運ぶ機能としてリフトを持ち乗せやすい工夫がされている車両で、障害者が自らの意志で運転する車など頭の片隅にもない。障害者が自ら運転するには一般と同じ車両を購入し、手動運転装置を付加するしかないことを知らされ、また、それには車椅子から乗り移り、車椅子を車内に入れるという大変な作業があることも初めて知った。障害者自らが運転する車の考え方はメーカーにはほとんどない。あるのは介助型車両ばかりである。メーカーが障害者向けに用意した選択肢の圧倒的な少なさには驚くというより呆れる方が先にたった。
ジョイスティックコントロールカーには大きな構造的な特徴が2つあり、いずれも障害者用自動車としては非常に革新的な機能であった。
1、電動車椅子のまま車に乗り込みそのまま車椅子の運転席となる
2、ジョイスティックと呼ばれる運転装置で片手だけですべての運転操作ができる
この情報を正確に必要な人に伝達する手法としていくつかの選択肢が考えられた。行動する障害者としての渡邊の今までの活動状況から考え、やはり直接的にジョイスティックコントロールカーそのものを展示して、その機能を実際に当事者に「見て」「触れて」「乗って」理解していただくことが先決であると考え、車両展示会形式の動員策を中心に『ジョイバン全国キャラバン』を企画した。
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